2013 年 27 巻 5 号 p. 822-827
症例は61歳女性.腹痛を主訴に胆嚢炎の疑いで当院を紹介受診した.来院時,熱発はなく腹痛は軽度であった.血液検査上WBC 16200 /μl, CRP 31.8 mg/dlと炎症反応高値を認め,画像所見と合わせて急性胆嚢炎と診断したが,悪性疾患を完全に除外できず保存的治療を開始した.入院後熱発・腹痛の持続があり,入院後第3病日に炎症反応の増悪およびCA19-9が12000 U/ml以上の異常高値を示した.画像評価により胆嚢穿孔による腹膜炎と判断し,緊急手術を施行.病理組織学的検索で胆嚢に悪性所見はなく,CA19-9の免疫組織染色で胆嚢粘膜および間質に陽性所見を認めた.術後経過は良好で,退院後にCA19-9は基準値内へ低下した.CA19-9高値は胆嚢炎をはじめとする良性疾患においてしばしば経験するが,本症例のように胆嚢炎に10000 U/ml以上の異常高値を伴うことは比較的稀であるため,本邦報告例の文献考察を含め報告する.