抄録
症例は60歳,男性.褐色尿を主訴に閉塞性黄疸を伴う下部胆管癌と診断され手術目的で入院した.腹部CT検査で下部胆管に造影効果を伴う隆起性病変を認めた.また総肝動脈が上腸間膜動脈から分岐後,膵頭部実質内を走行し,右側肝円索を疑う所見も認めた.総肝動脈と腫瘍は離れていたため肝動脈を温存しても根治性は得られると判断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.術中,右側肝円索を確認し,総肝動脈は膵実質から剥離し温存可能であった.病理組織診断は,十二指腸乳頭部癌で,pT1,pN0,M(-),fStageIであった.膵頭部領域の手術では,肝血流の維持や癌の根治性が重要であり,血管の破格を伴う症例では,安全で根治的な手術を行うために術前画像診断での正確な解剖の把握,術前の手術シミュレーションが重要である.