2015 年 29 巻 5 号 p. 939-947
症例は76歳の女性.発熱・黄疸を主訴に初診し,CT検査で下部胆管腫瘍による閉塞性黄疸を認め入院した.ERCPで下部胆管の狭窄像を示し,胆管生検で腺癌とともに,辺縁がMUC1免疫染色陽性で周囲に空隙を伴う小型腫瘍胞巣を多数認め,浸潤性微小乳頭癌(invasive micropapillary carcinoma:IMPC)の成分を有する下部胆管癌と診断した.右乳癌(充実腺管癌),認知症のため経過観察となったが,初診より16カ月後,胆管癌の十二指腸浸潤に伴う仮性動脈瘤の出血で再入院した.仮性動脈瘤の内視鏡的止血と,十二指腸ステント留置を行ったが,初診より18カ月後,原病悪化により永眠した.剖検では,腫瘍は膵浸潤と膵周囲リンパ節転移,十二指腸浸潤を認め,IMPCの成分は腫瘍の約80%を占め,残りは高―中分化型腺癌であった.IMPCの成分が主体である胆管癌はまれであり,文献的考察を加え報告する.