2017 年 31 巻 5 号 p. 831-837
症例は70代女性.上腹部痛と嘔吐を契機に胆嚢腫瘍を指摘された.膵胆管合流異常に合併した胆嚢癌の診断で胆嚢床切除術を施行.術後病理組織学的検査で胆嚢癌肉腫の診断となった.術後6カ月で肝転移再発を認めS-1療法,gemcitabine療法を施行.progressive diseaseであったが,他に新出病変を認めなかったため,肝切除を行った.術後gemcitabine療法施行し,初回手術後32カ月無再発生存中である.癌肉腫は上皮性悪性腫瘍の癌と非上皮性悪性腫瘍の肉腫が混在する腫瘍で,胆嚢原発の癌肉腫はまれな腫瘍である.本疾患は再発が多く予後不良であるが再発に対する有効な治療法は未だ確立されていない.今回,胆嚢癌肉腫の術後肝転移再発に対して,化学療法と肝切除を行い,病勢をコントロールしている1例を経験した.本症例は治癒切除が可能な胆嚢癌肉腫転移再発例に対する治療としての切除の有効性を示唆すると考えられた.