胆道
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胆管炎を契機に発症した妊娠中の先天性総胆管拡張症
-自験例と本邦集計57例の検討-
吉田 雅博高田 忠敬天野 穂高
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1997 年 11 巻 2 号 p. 196-202

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抄録

症例は25歳,女性,妊娠7カ月.上腹部痛,発熱,黄疸あり,当院産婦人科入院.腹部超音波にて先天性総胆管拡張症(CBD)と診断された.黄疸増強し,帝王切開にて出産(妊娠28週)し,その後,根治的治療を目的に当科へ入院した.腹部超音波で,径20cmの総胆管嚢腫を認めた.ERCPでは,膵管の圧排,著明な総胆管の拡張,膵管に胆管が合流する膵・胆管合流異常と診断した.CTにて,膵実質内まで続く総胆管の拡張を認めた.手術では,巨大な嚢胞周囲に炎症性癒着が著しく,また膵内深く達しており,胆管嚢腫のみの切除は困難と判断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理学的に,悪性所見は認めなかった.経過良好にて,術後31病日目に退院した,妊娠時の膵炎および胆管炎を契機にCBDと診断された本邦報告例は,現在まで57例であり,妊娠後半のものが多くみられた,胎児に及ぼす影響を考慮し,妊娠中の黄疸や胆管炎症例には,まず無侵襲の超音波検査を施行し,詳細な診断と的確な治療を行うことが必要である.

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© 日本胆道学会
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