抄録
症例は3 歳, 男性. 前医にて, 胆石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた. 術後第1 病日より胆汁瘻が出現し,第21病日に開腹ドレナージ術と胆嚢管と思われた断端の結紮術が施行された. しかし,胆汁瘻は軽快せず,黄疸と胆管炎が遷延するため当科へ転院となった.PTCD造影では,胆管前区域枝と後区域枝は完全に離断し,狭窄は肝内にまで及んでいた.ERCでは,総胆管は完全に離断され,中部胆管で途絶していた.腹部CTでは,右横隔膜下膿瘍がみられた.以上より,胆道再建は肝門部胆管空腸吻合術を予定術式とした. 開腹所見では肝門部に膿瘍が存在していたため,胆管断端は脆弱で,また胆管の肥厚性狭窄が肝内まで連続していたため,胆管空腸吻合を断念し,肝右葉,右尾状葉切除術,左肝管空腸吻合術を施行した.自験例は胆道狭窄に対する胆道再建や肝切除術の適応を考える上で,示唆に富む症例と思われたので報告する.