九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 218
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呼気時口腔形状の違いにおける腹部筋活動の変化について
~超音波診断装置を用いての検討~
*一力 俊英福田 隆一北島 保子坂口 真志
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抄録
【目的】
 現在、超音波診断装置での腹部筋活動の研究や呼吸法による体幹安定性を高めるトレーニングが多く見られている。そこで今回、口腔形状の違いで呼吸時の腹部筋活動に変化について検証したので報告する。
【対象】
 成人男性8名、女性4名、計12名、右12側、左12側のそれぞれ外腹斜筋(以下、EO)、内腹斜筋(以下、IO)、腹横筋(以下、TA)の3筋を対象とした。内訳は、平均年齢:24(±3.23)歳、平均身長:166.25(±7.48)cm、平均体重57.17(±8.58)kg。
【方法】
 超音波診断装置(TOSHIBA SSA-700A型 プローブ12MHz)を使用。計測肢位は、膝を自然に伸ばした背臥位とし、プローブは個人毎に肋骨下縁と腸骨稜の間で描画しやすい部分にあて、左右対称の位置とした。EO、IO、TAを画像上にて表出。(1)安静時呼気(2)息み(呼吸停止)(3)口すぼめ呼気(4)開口呼気(口唇を水平方向へ開いた状態)時の筋厚の変化を同一位置で計測。(2)以外は、咽頭閉鎖の影響を考慮し終末呼気を避けて計測。その後、全体の筋厚の変化と、(2)(3)(4)から(1)を引いたものを筋厚増減値として算出。
 各筋の(2)(3)(4)における筋厚増減値を対応のないt検定を用い、危険率5%未満を有意水準として統計処理を行った。
【結果】
 1.安静時呼気の筋厚の左右差は、左側に若干の増加を認めた(右側18.13mm、左側18.83mm)。
 2.3筋の合計が最も増加したのは開口呼気であった。(右側:24.25mm,左側:25.09mm)
 3.息みでは、EOの活動の低下を認め、左右とも口すぼめ(右側:p=0.005,左側:p=0.005)・開口呼気(右側:p=0.01,左側p=0.01)ともに有意差を認めた。
 4.左側に比べ、右側のEOの筋厚が増大傾向であった。
 5.TAでは開口呼気で最も筋厚増加が見られた。
【考察】
 口すぼめ呼吸でTAの活動が著明とならなかったのは、口腔内圧を高めて肺内の気管支内腔圧を高め、肺実質の活性を主とするためと考える。逆に開口呼気では、口腔内圧の減少により呼気時の筋活動を必要とするため、3筋の共同的な筋収縮となる結果が得られた。ことにTAにおいて活動が優位であったことから、開口呼気は一手段として有効と考えられる。しかし、3筋の筋活動による胸郭の可動性を制限する原因にもなりうる。
 また、右EO、左IO,TAの活動が高まったことは、身体活動の左右非対称性が考えられ、特に右EOの活動が高まったことで、横隔膜右側の活動性の低下が、Local muscleの活動性を制限したためと考える。
【まとめ】
 今回の結果より、TAの選択的な活動を促す方法として、開口呼吸が有効であると示唆された。今後は腹部筋活動に左右差についても検討していきたい。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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