抄録
肝に異常のない53例を対象とし, 1989年のCouinaudに従い背側肝をI1, Ir, caudate process(CP), Ir門脈をb-vein, c-vein, d-veinに分けて, 背側肝の門脈支配を検討した. 「結果」背側肝の門脈が共通幹を形成せず, その領域のみを還流する枝が 194 本, 他の背側肝領域と共通幹を形成したのが 31例 31本にみられた. 単独 I1 枝 72 本中 68本(94%)が左の門脈から分岐し, CP単独枝39本中21本(54%)が右門脈, 16本(41%)が後区域門脈根部, から分岐した. b-vein単独23本中15本(65%)が左門脈から, c-vein単独30枝中15枝(50%)が右門脈, 8本は左門脈(27%)から分岐した. d-veinは30本みられ, 28本(93%)が後区域第2枝より末梢から分岐した. I1枝がIr枝との共通幹を形成した18例中14例(78%)が左門脈から分岐した. I1とCP枝との共通幹は5例であった. 全体として, 23例(43%)でI1枝が右倒のb-veinやc-vein, CP枝との共通幹を形成した. しかしd-veinが他の背側肝と共通幹を形成したのは1例もなかった. 「結論」門脈 segmentationからみて, 尾状葉はCouinaudの背側肝のうちd-vein還流領域を除いた領域である. 43%の症例で左側と右側尾状葉門脈が共通幹を形成したことから, 尾状葉は一区域として考えるべきである.