抄録
胆石は主成分と肉眼所見から分類するという立場から,新しい分類法が作られた.しかし,黒色石で炭酸カルシウムを多量に含有する胆石と炭酸カルシウム石との区別は問題がある.著者らは両胆石の分類上の位置付けについて検討した.
黒色石86例中48例(55.8%)は無機カルシウム塩を含有し,その37例(77.1%)が炭酸カルシウムでcalcite型が多く,37例中24例(64.9%)は重量の70%以上が炭酸カルシウムであった.
一方,炭酸カルシウム石(石灰乳胆汁を含む)は主成分がほとんどaragonite型の炭酸カルシウムであった.両胆石例の臨床症状には差を認めないが,炭酸カルシウム石例は全例胆嚢管閉塞が認められた.胆嚢病変は黒色石例では軽度で,炭酸カルシウム石例では完成された慢性胆嚢炎像を示すものが多かった.
以上の所見から,両胆石は成因上異なるものであり分類上区別して取り扱う方がよいと考えた.