1994 年 8 巻 3 号 p. 215-222
胆道癌切除材料54例 (乳頭部癌10例, 総胆管癌21例, 胆嚢癌23例)を対象に, 抗 Chromogranin A抗体を用いた免疫染色を行い, 神経内分泌細胞の出現について検討し, さらに癌抑制遺伝子p53の異常発現についても免疫組織学的に検索した. 神経内分泌細胞の出現は23例(43%)にみられ, 発生母地別には乳頭部癌と胆嚢癌では胆管癌に比し高頻度であった. 組織学的に神経内分泌細胞は他の腫瘍細胞と同様の形態学的所見を示し, 陽性率や陽性数は高分化型腺癌で高かったが, 深達度による差はみられなかった. また, 神経内分泌細胞には細胞分裂像は全く確認されず, さらに同陽性症例ではmitotic indexは低い傾向が得られたことより, 神経内分泌細胞はむしろ低悪性度の指標とも考えられた. 胆嚢癌では21例中8例(38%)にp53の異常発現が確認されたが, 神経内分泌細胞陽性症例では陰性症例に比し有意に高頻度であった.