1994 年 8 巻 3 号 p. 277-282
症例は57歳, 男性. 肝門肝床浸潤型進行胆嚢癌で他院より経皮経肝胆道ドレナージ(以下, PTCD)施行後, 入院した. 腫瘍は肝右葉前区域, 肝左葉内側区域に浸潤し, 肝門部に及んでいた. 腹腔動脈造影にて, 右肝動脈は前枝, 後枝分破部より末梢でencasementを認めた. 経皮経肝門脈造影にて, 門脈本幹に軽度の狭窄を認めた. この時, 門脈右枝に対し経皮経肝門脈塞栓術を施行した. さらに, 胆管右枝のドレナージ不良のため, 前枝, 後枝にPTCDを追加した. 十分, 減黄された時点で手術を施行した. 肝十二指腸間膜の浸潤が強く, 剥離前に門脈内超音波検査 (以下, 門脈内US) を施行した. 門脈右壁の一部で浸潤を認め, 右肝動脈本幹へは浸潤を認めないと診断した. この所見をもとに, 拡大肝右葉切除, 門脈合併切除が可能であった. 組織所見は中分化管状腺癌, se, hinf3, binf3, vs1, n2, (+), bw0, hw0, ew1 であった. 門脈内USは, 胆道癌の術式決定に有用であった.