2008 年 2008 巻 11 号 p. 58-69
近代における医薬品開発は欧米を中心に発展しました。その際、実験のツールとした動物においては非げっ歯類では主にイヌが用いられて来ました。動物種選択の際の特徴として、入手と取り扱いが容易(他の特定の動作を行なわせることが簡易)で、行動・症状の観察で薬物の作用ならびに毒性に関する情報を得やすい事等の理由により実験動物の中心として用いられていました。特に安全性試験においてのイヌの位置付けは、生体異質物質である化学合成物質ではげっ歯類からサル類への橋渡し的位置にあり、イヌからでもヒトヘの外挿性は比較的良好です。しかし近年、ヒトの標的分子に対する特異性が高いバイオ医薬品(e.g.ヒト化抗体医薬)開発が急速に進み始めると、交差反応性の不一致が問題点として浮上し、非げっ歯類の選択では臨床デザインに基づいたヒトヘの外挿性に優れ、かつ感受性の高い動物種を選択する重要明確な根拠が必要になり、霊長類の使用頻度が増しているのも現実です。