2011 年 2011 巻 13 号 p. 116-123
はじめに
われわれヒトやげっ歯類等の生物体内には、広く“体内時計”が存在しており、ミクロな現象(例えば、遺伝子発現)からマクロな現象(例えば、活動量や心拍数)まで、多くの生命現象が約24時間周期のリズム、いわゆる“概日リズム”を持つことが知られている。一方、毒性試験や機能性評価試験で用いられるマウスやラット等のげっ歯類は、明暗サイクルや温度、湿度等の室内環境が厳密に制御された施設内にて飼育されており、12時間周期の明暗サイクルは、通常、人間社会に合わせて、明期が日中(例えば8:00~20:00)に設定される場合が多い。そして様々な試験が明期に実施されている。これは、試験の評価が夜行性のげっ歯類にとっての睡眠期に実施されていることを示している。本稿では、明期と暗期におけるマウスの体内リズムの違いを、最近の知見を中心に紹介するとともに、外界からの刺激(化学物質の侵入やストレス)に対する応答が、睡眠期と覚醒期とで異なる可能性について論じる。