2012 年 2012 巻 14 号 p. 99-105
サリドマイドは、近年ハンセン病治療薬、多発性骨髄腫治療薬として販売が再開されているが、半世紀にわたる研究にも関わらずその催奇性の分子機構は不明のままであった。我々は、サリドマイドが実際に結合し作用する標的タンパク質を同定し催奇性のメカニズムを分子レベルで明らかにした。
我々はまず機能性ナノ磁性微粒子を用い、サリドマイドが直接結合するタンパク質セレブロンを同定した。セレブロンはタンパク質分解に関わる酵素複合体(ユビキチンリガーゼ)の構成因子であり、胎児の四肢の形成に重要な役割を果たしていること、サリドマイドはセレブロンに結合してこの酵素活性を阻害することがわかった。更に、サリドマイドが結合しないように改変したセレブロンの遺伝子を導入したゼブラフィッシュとニワトリでは、サリドマイドによる奇形がほとんど見られなくなることを確認し、セレブロンがサリドマイド催奇性の標的因子であることを立証した。