谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
レクチャー ファーマコビジランス
7-7 ファーマコビジランスにおけるゲノム薬理学及びバイオマーカー関連情報の活用
鳥谷部 貴祥
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2013 年 2013 巻 15 号 p. 97-101

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抄録

 通常、医薬品の承認前に実施される臨床試験では、症例数、投与期間あるいは患者背景等に一定の制限があるため、医薬品によるリスクの全容を把握することには限界がある。さらに、近年では、国際共同治験あるいは世界同時開発といった新たな開発戦略が増加しており、承認前に検討可能な日本人症例数の低下、日本の承認時点で海外市販後データが集積されていない等の状況が生じており、海外開発が先行していた時代に比べ、評価対象となるデータの内容が変化している。一方、市販後の安全対策として、2011年4月に「医薬品安全性監視計画」及び「リスク最小化計画」から構成された「医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)ガイダンス(案)」が公表され、パブリックコメントを経て2012年4 月に当ガイダンスが通知された(薬食安発0411 第1 号・薬食審査発0411 第2号)。継続的な医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)の重要性が高まっており、PMDAは開発時から製造販売後まで継続して医薬品のリスクに関するデータの収集、分析、評価及びそれに対する安全対策の立案を実施している。

 また、医薬品のベネフィット・リスクに関連する情報の一つとして、近年、ゲノム薬理学が注目されており、薬物応答の個人差とDNA及びRNA等の特性の変異との関連が検討され、有効性の向上、重篤な副作用の回避等に有用な知見が得られるようになってきた。それらの知見については、科学的な妥当性を評価した上で必要な情報が添付文書へ追記されており、添付文書にゲノム薬理学関連情報の記載がある医薬品の数は増加傾向にある。PMDAでは、ゲノム薬理学及びバイオマーカーに関連するデータの収集、分析、評価を行い、添付文書への掲載等の方策を講じるとともに、医薬品開発におけるゲノム薬理学の利用を推進するために、2009年4月よりファーマコゲノミクス・バイオマーカー相談を実施している。

 本稿では、PMDAにおけるファーマコビジランスならびにゲノム薬理学及びバイオマーカー関連の事案について検討を行うPMDA Omics Project (POP) Teamの取組みを紹介するとともに、ゲノム薬理学関連情報を添付文書に追記した具体的事例を紹介する。

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© 2013 安全性評価研究会
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