2015 年 2015 巻 17 号 p. 53-57
医薬品の胚・胎児発生に関する試験では、ラットやウサギ等の哺乳類が用いられているが、これらの実験動物を用いた評価系は評価期間が長くスループット性に欠けることに加え、コストが高く、必要な化合物量も多いことなどから、創薬研究の初期段階での評価には不向きである。そのため創薬初期段階で利用可能な代替法として、マイクロマスカルチャー(micromass culture:MM)法1)、全胚培養(whole embryo culture:WEC)法2)、EST(embryonic stem cell test)法3)が利用されてきた。しかしこれらのin vitro評価系では、一部の器官への分化に対する薬物の影響を評価しているため、複雑な胚発生過程における医薬品の作用を総合的に評価することは困難と考えられる。また、手技手法に熟練を要する試験法も存在する。そこで、これら懸念点を払拭する新たな評価系とし て、ゼブラフィッシュの催奇形性評価への応用が検討されてきた4-6)。ゼブラフィッシュを用いた催奇形性評価法については、これまで種々の報告が示している通り、実験操作が簡便であり、従来のin vitro評価系と比較しスループット性及び催奇形性の予測率が高いことから、その有用性は高いものの、試験系は必ずしも統一されておらず、各施設で独自の評価方法を確立しているのが現状である。そのため本稿では、ゼブラフィッシュを用いた催奇形性評価法について、当社で確立した手法の概要を示した後、これまでに報告されている各評価手法も踏まえ、考慮すべき事項を示したい。