谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
ヒト化動物
1.ヒト肝細胞キメラマウスを用いた抗体医薬品の肝毒性評価
仁平 開人
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2019 年 2019 巻 21 号 p. 1-8

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抄録
 薬剤誘発性肝障害(drug induced liver injury: DILI)は、医薬品の開発中止や市販後の警告・販売中止に至る主要な有害事象であり、医薬品開発においてはDILIのポテンシャルやリスクの早期見極めが求められている。一方、非臨床からのDILIの予測性は高くないことが知られており、新たな肝毒性評価モデルが求められている。DILIはこれまで主に低分子医薬品で顕在化してきたが、近年、抗体医薬品においても認められている。抗体医薬品の非臨床安全性評価には、標的分子のアミノ酸配列のヒトとの相同性の高さからカニクイザルなどのサルが汎用されるが、標的分子のわずかなアミノ酸配列の違いによって生じる抗体の結合力や活性、下流シグナルに対する感受性及び免疫刺激性の種差が問題となることがあり、非臨床試験結果から臨床での有害事象を予見することが難しいケースがある。
 この課題を解決するため、ヒト肝細胞キメラマウスの利用が有用な手段となりうる。このマウスは肝臓の大部分がヒト肝細胞に置換されており、肝炎や薬物代謝の研究に用いられている。また最近、低分子医薬品の肝毒性研究への利用も報告されたが、抗体医薬品の肝毒性を評価した報告は少ない。そこで本稿では、臨床において肝毒性を誘発した抗体としてtumor necrosis factor(TNF)-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)receptor 2(TRAIL-R2)アゴニスト抗体を題材にして、その肝細胞傷害作用についてヒト肝細胞及びヒト肝細胞キメラマウスを用いて解析し、抗体医薬品の安全性リスク評価ツールとしてのヒト肝細胞キメラマウスの有用性を検証した事例1)を紹介する。
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© 2019 安全性評価研究会
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