谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
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遺伝子治療用製品の開発~AAVベクターを用いた遺伝子治療用製品における安全性の課題と対策~
香川 雄輔
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2024 年 2024 巻 26 号 p. 50-58

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抄録

遺伝子治療は、疾患の原因を修正または補完するために遺伝子を利用する治療法である。1989年、世界初のヒトへの遺伝子治療が行われ1)、この治療は、腫瘍浸潤T細胞療法の目的でレトロウイルスを使用したものであった。1990年、先天性アデノシンデアミナーゼ欠損症患者に対して遺伝子治療製品が投与され2)、1999年に遺伝子治療製品の投与による死亡例が報告された3)。この事件は、オルニチントランスカルバミラーゼ代謝異常に適用されたアデノウイルスベクターを使用した遺伝子治療製品で発生した。2003年に中国で世界初の遺伝子治療製品(Gendicine®)が承認され、2009年にヨーロッパで遺伝子治療製品の第Ⅲ相臨床試験が成功した4)。この治療は、リポプロテインリパーゼ欠損症の治療にアデノウイルスベクターであるグリベラ®を使用したものであった。2012年、ヨーロッパでリポプロテインリパーゼ欠損症の遺伝子治療製品であるグリベラ®が承認勧告された5)。2017年、アメリカで急性リンパ性白血病とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する世界初のCAR-T(キメラ抗原受容T細胞)治療製品であるキムリア®が承認された。2019年、日本でもキムリア®とコラテジェン®が承認された。これにより、日本でも遺伝子治療が実施されるようになった。同年、アメリカで脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)に対する全身性の遺伝子治療製品であるゾルゲンスマ®が承認された。2020年、日本においてもゾルゲンスマ®が承認された。さらに2023年、眼科疾患における初めての遺伝子補充療法のルクスターナ®が日本で承認され、様々な遺伝子治療製品が開発され続けている。これらの承認や成功例は、遺伝子治療の進歩を示しており、将来的にはさらに多くの疾患に遺伝子治療が応用される可能性がある。

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