2004 年 11 巻 2 号 p. 165-174
熟成したり煮込んだ食品に共通して感じる厚みと持続性を「こく味」と定義し、食の簡便化のなかで失われがちなこの風味を捉えようと考えた。そこで長期熟成を経る伝統製法で作られるゴーダチーズと信州味噌がこの「こく味」を持つ事に着目し、その長期間の熟成過程における色、成分、風味の変化を調べた。その熟成過程において、共通して酵素反応によるペプタイド生成に続く非酵素的修飾が進行し、厚みと持続性が発現した。このペプタイド画分のメイラード反応物は、長期熟成された食品の持つ「こく」に寄与することが示唆された。