日本味と匂学会誌
Online ISSN : 2424-1326
Print ISSN : 1340-4806
5. 副嗅球におけるフェロモンの情報処理・学習機構 : グルタミン酸受容体の果たす役割(<総説特集>ケミカルコミュニケーションの世界)
谷口 睦男椛 秀人
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2005 年 12 巻 1 号 p. 29-38

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抄録
当研究室では学習記憶の神経機構を解明するため、交尾刺激を契機として雌マウスに形成される雄フェロモンの記憶をモデルシステムとして用いてきた。そして、フェロモン記憶の座は副嗅球であり、フェロモン記憶には副嗅球僧帽細胞が顆粒細胞による抑制から解放されることが重要であること、および代謝型グルタミン酸受容体2型(mGluR2)が重要な役割を果たしていることを見出した。記憶の座である副嗅球の主要な神経回路の一つは、僧帽細胞-顆粒細胞間の相反性シナプスであり、このシナプス伝達にはNMDA型受容体およびmGluR2が重要な働きをしていることも見出した。本稿では、フェロモン記憶の特徴について、グルタミン酸受容体に関する知見を中心に概説するとともに、副嗅球内相反性シナプス伝達に果たすグルタミン酸受容体の役割を考える上で参考となる知見を紹介する。鋤鼻器の生理的な役割については、フェロモン物質などの受容に関与し、動物の生理と行動に重要な役割を果たしていることが明らかにされてきた。
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© 2005 日本味と匂学会
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