日本味と匂学会誌
Online ISSN : 2424-1326
Print ISSN : 1340-4806
薬剤性味覚障害
池田 稔吉川 琢磨
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1998 年 5 巻 2 号 p. 125-131

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抄録

2,278例の味覚障害患者の検討により、約22%の症例が服用薬剤にその原因をもつ薬剤性味覚障害であり、原因として最も多いものであると報告されている。味覚機能に必須微量元素である亜鉛が重要な役割を果たすことはすでに多くの報告により指摘されており、薬剤性味覚障害においても、薬剤の持つ亜鉛キレート作用が関与しているものと推察されてきた。実際、味覚障害の原因とされる幾つかの薬剤において、亜鉛に対するキレート作用の存在が実験的に証明されている。また味覚障害の原因薬剤として知られ、また金属キレート能を持つテトラサイクリンをラットに投与することで、血清亜鉛値の低下とともに26%のラットに味覚障害が発現した。薬剤性味覚障害の原因として、薬剤の持つ亜鉛に対するキレート作用が一つの重要な因子であると思われる。

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© 1998 日本味と匂学会
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