待遇コミュニケーション研究
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2018年待遇コミュニケーション学会春季大会・秋季大会研究発表要旨
「人間関係」「場」「意識」「内容」「形式」に言及するメタ言語表現から読み取れる表現主体の待遇意識
李 婷
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 16 巻 p. 113

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抄録

メタ言語表現とは、表現主体が自分や他者(相手/第三者)がそれまでに行った・いま行っている・これから行おうとするコミュニケーションに言及する言語表現である。メタ言語表現の使用と選択には、「待遇意識の表れるところ」(杉戸1983)である。本発表では、「人間関係」「場」「意識」「内容」「形式」及びその組み合わせに直接言及するメタ言語表現の例を取り上げ、これらのメタ言語表現から読み取れる表現主体の待遇意識を探った。

「人間関係」への言及として、「高校中退の俺が言うわけじゃないんだけど、」、「先輩だけに言っちゃいますけどね。」など、「場」への言及として、「一日早いけど、今言っておくわ。」、「これ終わったら、話あるんで、外、付き合ってもらっていいんですか。」など、「意識」への言及として、「こんなこと言いたくないけどさ、」、「恩着せがましく言うつもりじゃないけどもね、」など、「内容」への言及として、「私ごとでございますが、」、「僕も本当のことを言います。」など、「形式」への言及として、「餌?餌ということばはよくないですね。」、「残念ながら、残念ながらという評価はしない方がいいんですけれども、」などを取り上げて、読み取れる待遇意識について分析を試みた。さらに、上記枠組みの組み合わせに言及するメタ言語表現として、「今日はさ、せっかくこうやってみんな集まったから、特別に俺がボクシングをやってる理由を教えてやるよ。」などを取り上げ、より複合的で連動的な待遇意識を探った。

メタ言語表現の具体例から読み取れた待遇意識は、「人間関係」「場」「意識」「内容」「形式」が連動する中で捉えるべきであり、コミュニケーション行為の全体を意識する必要がある。たとえ「人間関係」だけに言及しているメタ言語表現であっても、待遇意識は「人間関係」だけに限定されるわけではない。具体的なコミュニケーション場面によっては、「人間関係」と「場」、または、「人間関係」と「内容」がより緊密な連動関係を見せている場合もある。コミュニケーションでは、表現主体は自分自身の待遇意識を自覚し、必要に応じながら、メタ言語表現などで待遇意識を相手に示すことができる。一方、理解主体は、メタ言語表現を初めとする言語使用を手がかりに、相手の待遇意識を読み取りながら、コミュニケーションを進めていくのである。

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