待遇コミュニケーション研究
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2020年待遇コミュニケーション学会春季大会・秋季大会研究発表要旨
LINE接触場面における「再誘いコミュニケーション」に関する考察
張 家沁
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2021 年 18 巻 p. 68

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抄録

本研究で取り上げる「再誘い」は、初出の誘い会話が遂行できずに、それ以降にも行う誘い行為であり、「再誘いコミュニケーション」は、「再誘い」における表現行為と理解行為によって成り立つ。「誘い」において、相手の応答への受け止め方や、対人意識が重要で、特にSNSによるコミュニケーションでは、即時の表情などが読み取れないため、感情の伝達がより難しくなり、2回目となる再誘いに苦手意識を持つ学習者が多く生じるのだと思われる。先行研究は、表現のストラテジーを分析するものが多かったが、その背後にある意識に関する考察が副次的なものとなり、協力者自らの語りを扱う研究は少なかった。したがって、本研究では、LINEにおける「再誘い」行為に着目し、接触場面でコミュニケーション主体の意識について考察することを目的とする。

調査では、日本語母語話者と上級学習者4名を協力者とし、「再誘い」に関わる過去の経験について、半構造化インタビューを行った。それを基に、2つの場面を設定し、新たに場面と合致した関係性を持つ4名の協力者にLINEでやり取りをしてもらい、個別に送信者・受信者の双方の協力者にフォローアップインタビューを実施した。分析では、M-GTAを参考に、分析テーマに関連する協力者の発言を抽出し、概念を生成した。その後、類似したテーマに関する概念を1つのカテゴリーの中にまとめ、修正や再構成した後に、グループ化し、再誘いコミュニケーションのモデル図を作成した。

分析の結果、誘う側と誘われる側にいるコミュニケーション主体が意識する要素が共通していることが明らかになった。それは、人間関係、コミュニケーションの工夫、負担、感情認識、意思表示とコンテキストである。コミュニケーション主体は1回目の誘いの失敗や人間関係への配慮などにより負担を感じているが、コミュニケーションの工夫を駆使してそれを解消しようとしている。それらの工夫に関する考慮は、人間関係とも密接に関わり、高度な表現力と読解力によって具現化される。

また、コミュニケーション主体は1回目の誘いが双方にとって利益があるかどうかを判断し、再誘いを進めるか、回避するかを決める。誘われる側が利益のある行為と判断した再誘いは成功しなくても、相手との親密度が上がったと実感する場合も存在するが、再誘いの回数が増えるにつれて、双方の負担が大きくなることが観察された。

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