待遇コミュニケーション研究
Online ISSN : 2434-4680
Print ISSN : 1348-8481
特別寄稿
接触場面におけるコミュニケーション方略を母語話者はどのように学習するか
自治体における非母語話者窓口対応の縦断調査から
栁田 直美
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2023 年 20 巻 p. 83-97

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抄録

近年の在留外国人の増加を受け、わかりやすく情報を伝えるための「やさしい日本語」への注目が集まっている。日本政府は2018年に、すべての省庁で「外国人向けの行政情報・生活情報の更なる内容の充実と、多言語・やさしい日本語化による情報提供・発信を進める」ことを打ち出し、やさしい日本語のガイドラインを作成した。これらを受け、全国の自治体ではやさしい日本語の活用に向けた研修が盛んに行われるようになってきている。しかしながら、特に話し言葉に関するガイドラインや研修は、必ずしも自治体職員の言語行動の分析にもとづいて作成されたものとはいえない。本研究は、自治体窓口における非母語話者対応の実態を明らかにすることを目的として行った縦断調査において、調査期間中に行った「ふりかえり活動」によって窓口対応担当者にどのような意識面の変容がもたらされたのか、また、「ふりかえり活動」の前後の言語行動にどのような変容が見られたのかを分析したものである。分析の結果、窓口担当者間のふりかえり活動には一定の有効性が認められるものの、窓口担当者間のふりかえりだけでは意識化されにくい面や言語行動の変容に直結しない項目があることが明らかになった。このことは、やさしい日本語のガイドラインや研修などに自身やお互いの言語行動を評価する活動を取り入れることでよりその成果が上がる可能性があることと、窓口担当者間のふりかえり活動だけでは意識化されにくい面や言語行動に直結しない項目に重点的に専門家のサポートを行うことにより、「やさしい日本語」というコミュニケーション方略の学習が効率的に進む可能性を示唆しているといえる。

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© 2023 待遇コミュニケーション学会
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