待遇コミュニケーション研究
Online ISSN : 2434-4680
Print ISSN : 1348-8481
研究論文
待遇コミュニケーションに基づく調査のあり方
「意識」に着目した調査事例を踏まえた考察
平松 友紀
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2025 年 22 巻 p. 100-116

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抄録

本稿では、待遇コミュニケーションに基づく調査研究における、コミュニケーション行為を追究するための調査視点、データ収集や分析方法などの調査のあり方を検討する。本研究では、特に「意識」に着目し、先行研究を概観し調査方法を再考するための知見、課題を検討した。その結果を踏まえ調査の視点、方法の一案を提示し、実際に実施した調査結果をもとに、改めて、待遇コミュニケーションに基づく調査のあり方を考察した。

「意識」を捉える調査では、本研究では主に次の3点を提示した。(1)具体的なコミュニケーション行為のなかで、調査協力者の「前提」などの内面を深く探る方法、(2)調査協力者に判断をゆだねたやりとりのなかでのコミュケーション行為の展開に伴う「意識」を収集する方法、(3)「連動」などのように「意識」を含め複数の視点で分析する方法、である。これらを踏まえ本研究では、ビジネスメールを事例とした調査を実施した。調査の語りからは、メールの送受信から想起された調査協力者の「前提」が捉えられ、本稿では、(1)コミュニケーション行為の内省のきっかけとなる出来事、(2)調査協力者により異なる、認識と表現との「連動」をとり上げた。考察では、先行研究ではコミュケーション行為の前提に、コミュニケーション主体の叶えたい意図が明確にある状態が、自明のこととして想定されてきた点を指摘した。そして、その場の意図や待遇意識に留まらず、「前提」を含めて捉える調査を、やりとりのなかで展開されていく動態的な意識や認識として追究できれば、コミュニケーション主体が判断していく過程を含めた「意識」を検討していける点に言及した。それは、主体の認識に重点を置きコミュケーション行為を捉える、待遇コミュニケーションに基づく調査のあり方の一つだといえるのだろう。

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