待遇コミュニケーション研究
Online ISSN : 2434-4680
Print ISSN : 1348-8481
研究論文
接触場面での人間関係構築過程の解明
【前提】と「意識」の連動に着目して
莫 冠シン
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ジャーナル 認証あり

2025 年 22 巻 p. 83-99

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抄録

本論文は、コミュニケーション主体が接触場面においてどのように人間関係を構築するのかについて、コミュニケーション主体の【前提】と「意識」の連動に着目し、縦断的に観察・分析したものである。

本研究では、同じ大学院に通う新入生3名(I、N、Y)を研究対象として、YをベースとしてIおよびNとそれぞれ一対一のペアを形成した。対象者同士がほぼ初対面の状態から6回にわたり月1回の会話調査に協力してもらい、会話後のフォローアップ・インタビュー調査データを基に分析を行った。

結果として、YとIは初期段階では<人間関係構築に対する認識>の【前提】にずれが見られ、<相手との関係性>に対する認識の相違があったが、会話を重ねることで、相手の<人間関係に対する捉え方>の【前提】を窺い、近似性を感じるようになったことで、<相手との関係>を前向きに捉えるようになった。一方、YとNは、初期の段階では、<人間関係構築に対する認識>の【前提】は近似していたが、会話を重ねるにつれ、<人間関係に対する捉え方>の【前提】の相違に気づき、<相手との関係>に対する認識は、最初の関係性の深化への期待から、現状維持という方向に変わっていった。

このように、コミュニケーション主体は初期段階の接触において、お互いに<人間関係に対する捉え方>の【前提】を窺うことができず、かわりに<人間関係構築に対する認識>という【前提】に基づいて相手への印象を形成し、会話相手との関係性に対する「意識」を構成していた。しかし、会話を重ねる中で、相手の<人間関係に対する捉え方>の【前提】を理解することが、人間関係の発展において重要な役割を果たすことが明らかになった。

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