2023 年 12 巻 1 号 p. 18-28
Patient-reported outcome(PRO),患者報告アウトカムは「患者の回答について,臨床医や他の誰の解釈も介さず,患者から直接得られる患者の健康状態に関するすべての報告」と定義される。有害事象報告やQOL評価において患者評価と医療者評価の間には大きな乖離があることが示されており,近年,臨床試験や日常臨床においてPROを組み込むことの重要性が認識されつつある。本邦の血液領域では二つの大規模なQOL横断的調査が行われ,GVHDや就労などのQOL関連要因が示された。また,本邦の単施設研究からは,移植前QOLと移植後成績の有意な相関が示されている。今後はPROを観察するだけではなく,臨床に活用する工夫が必要である。QOLだけでなく,二次がんや就労などの晩期アウトカムはいずれもPROであり,「医療者の負担を増やさずに,患者さんから情報をもらって,診療に生かす」という考え方が重要である。