日本造血・免疫細胞療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-455X
総説
同種造血幹細胞移植後の脳・神経合併症―ウイルス性脳炎と白質脳症を中心として―
緒方 正男
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2023 年 12 巻 1 号 p. 35-42

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抄録

 同種造血幹細胞移植後にはウイルス,真菌,原虫などによる多彩な感染症,脳血管障害,免疫介在性の病態,代謝異常,薬剤,腫瘍浸潤など様々な病態が中枢神経系合併症の原因となる。国内ではHHV-6Bは中枢神経系合併症の主要な原因である。特に臍帯血移植患者において移植後2~6週目に中枢神経系症状をきたした場合はHHV-6B脳炎を疑う。発症早期における精神状態の変化を見落とさず治療を開始することが予後の改善に繋がると考えられる。可逆性後頭葉白質脳症症候群はカルシニューリン阻害薬による血管内皮細胞障害を主たる原因として,前処置,免疫学的活性化,感染症や高血圧などが発症を促進する。免疫抑制剤の中止により神経症状の改善が期待されるが,GVHDの悪化を高率にきたす。移植後中枢神経系感染症は様々な病原体が原因となり,診断が困難な場合が少なくない。次世代シークエンシングなどによる網羅的解析の実用化が期待される。

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© 2023 一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会
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