2023 年 12 巻 2 号 p. 65-73
同種造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染は主な移植後合併症の一つである。CMV予防投与や先制治療の開発により,致死的なCMV感染症の発症率は改善したものの,CMV再活性化は現在でも移植後非再発死亡を悪化させる大きな要因となっている。非再発死亡が増加する原因として,使用される薬剤やGVHDの影響,再活性化後の免疫状態変化による複合的なものが推測されている。一方,移植後CMV感染による急性骨髄性白血病の再発抑制効果が報告されている。否定的な報告もあり一致した見解が得られていないものの,CMV再活性化後に生じる成熟NK細胞の増加と長期間の持続が機序の一つとして考えられている。また,これらの効果は疾患の状態,ドナー,移植方法により変化することが示された。CMV再活性化による死亡率増加を抑制するため適切な先制治療,予防投与が重要であり,今後もCMV再活性化コントロール方法のさらなる適正化が期待される。