2023 年 12 巻 4 号 p. 239-244
キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法患者の身体機能および治療侵襲度を検討した報告は少ない。そこでCAR-T細胞療法患者の治療前後の身体機能を定量的に評価し,CAR-T細胞療法の治療侵襲度を身体機能の側面より自家移植患者と比較し検討した。2014年から2022年に当院でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫,多発性骨髄腫に対してCAR-T細胞療法および自家移植目的で入院した58人を対象とした。CAR-T細胞療法患者では,治療後においてサイトカイン放出症候群(CRS)を26人中23人で発症し,発熱期間は中央値で6日であった。治療前パフォーマンスステータス(PS)は多くの患者で良好であったが,CRSに伴う発熱期間が長期であった患者は治療後PSが低下した。治療前6分間歩行距離(6MWD)は自家移植患者と比較して有意に低値であったが,治療後にかけては有意な変化を認めなかった。一方で,自家移植患者は治療前から治療後にかけて6MWDが有意に低下した。今回の検討において,身体機能側面から治療侵襲度を検討した場合,CAR-T細胞療法よりも自家移植の方で治療侵襲度が高い可能性が示唆された。一方で,CAR-T細胞療法では治療前時点の身体機能が低い患者が多いことが分かった。今後,高齢者や治療歴の長い患者に適応を広げていく上でリハビリテーション介入の重要性も示唆された。