2024 年 13 巻 2 号 p. 56-60
小児急性リンパ性白血病(ALL)の長期生存率は約90%にまで向上した一方で,移植に伴う晩期合併症は小児においてはより重要であり,移植適応は慎重に選ばれている。初発ALLでは層別化治療が採用され,再発リスクの高い「超高リスク群」に対してのみ第一寛解期に移植が行われている。乳児ALL(KMT2A再構成あり),BCR-ABL1陽性ALL,低二倍体ALLなどに第一寛解期の造血細胞移植が考慮されてきたが,それぞれの群に対する治療成績の改善と微小残存病変(MRD)測定法の進歩に伴い,MRD残存例など一部の群に限られるようになっている。また,再発ALLでも,再発時期や再発部位による再々発リスクに基づき移植適応が変化しつつある。小児ALLにおける移植適応は,既存のエビデンスをもとに患者ごとの状況に応じた丁寧な議論が必要である。小児と成人との共通の議論をもとにALL全体の治療戦略の中で,移植の位置づけの最適化が期待される。