天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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水銀トリフラート触媒による新奇環化異性化反応を鍵工程としたアザ三環性アルカロイド (–)-レパジホルミンAの合成研究
菊池 正峰江崎 伸之介小山 智之野久保 春華児玉 猛西川 慶祐舘 祥光森本 善樹
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p. Oral2-

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抄録

 複雑な多環性アルカロイドの合成は現代の有機合成レベルをもってしてもけっして容易なことではない。そのため窒素原子を含む骨格構造の効率的で立体選択的な構築法の開発は、今日の天然物合成化学においても重要な課題である。本研究では海洋産アザ三環性アルカロイド (–)-レパジホルミンA (1) の合成におけるキーステップとして、我々の研究室で見いだしたHg(OTf)2を触媒に用いる新奇環化異性化反応を応用した1の形式合成を達成し、さらに新規全合成法の開発に成功したのでそれらの結果について報告する。

 (–)-レパジホルミンA (1) は1994年Biardらによってチュニジアの海岸で採取された海洋性被嚢類のClavelina lepadiformis Mullerから単離されたアザ三環性アルカロイドである1。1は様々な腫瘍細胞系に対して細胞毒性活性を示し[IC50 = 9.20 mg/mL (KB), 0.75 mg/mL (HT29), 3.10 mg/mL (P388), 6.30 mg/mL (P388 doxorubicin-resistant), and 6.10 mg/mL (NSCLS-N6)]、さらに抗不整脈作用や血圧降下作用等の心臓血管系への作用も有することが報告されている。レパジホルミンAの構造は最初分光学的及び化学的な証拠に基づいて1とは異なる構造が提出されたが、その後ラセミ体及び光学活性体の全合成が報告され絶対配置も含め1のように構造改訂された2。その構造はtrans-1-アザデカリン系のAB環にAC環がスピロ環状に縮環した特異なアザ三環性骨格を特徴とし、窒素置換不斉4級炭素を含む4つの不斉炭素とボート型をしたB環をもつ複雑な骨格構造を有している。顕著な生理活性と特異な骨格構造から多くの合成化学者の注目を集め、これまでに10以上の全合成(形式合成含む)が報告されているが3、我々は独自の方法論による1の全合成を目指し合成研究に着手した。

 1の合成計画をScheme 1に示す。当研究室では直鎖状のイノン分子からへテロ置換不斉4級スピロ炭素原子を含む1-へテロスピロ[4.5]デカン骨格への環化異性化反応がHg(OTf)24によって触媒されることを見いだしている5。これまでにないタイプの反応であり不斉4級炭素とスピロ環がC–C結合形成を伴いながら構築される新奇連続環化異性化反応である。本反応をイノン基質4に適用しAC環に相当するアザスピロ環化体3を立体選択的に構築することを計画した。3のケトンをメチレンに還元することによりKimらの合成中間体2へと導く予定である。環化前駆体4はスルホン6とL-グルタミン酸から6段階で得られる既知物質ピロリジノン56のカップリングにより合成することにした。

 市販の4-ペンチン-1-オールのDPS保護体77のアセチリドを1,3-ジヨードプロパン (8) でアルキル化しヨウ素体9とした後、スルフィナートで置換しスルホン6を調製した(Scheme 2)。6のアニオンをピロリジノン5に付加し、ラジカル条件でスルホニル基を除去8し環化前駆体4を合成した。環化異性化反応の条件を種々検討した結果、4をMeCN中室温で45分間水銀トリフラート (0.05 equiv) で処理したところ望む環化異性化反応が進行し、アザスピロ環化体3を単一生成物としてジアステレオ選択的に74%の収率で構築することに成功した。本反応は、窒素官能

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© 2013 天然有機化合物討論会電子化委員会
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