天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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水酸基やアミノ基が活性化する共役イミンの[4+4]環化反応:合成的展開と生体機能制御の可能性
筒井 歩プラディプタ アンバラ松本 梨沙深瀬 浩一田中 克典
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p. Oral27-

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抄録

共役アルデヒドに対して一級アルキルアミンを作用させると、速やかに対応する共役イミンが得られる。窒素上に電子求引基を持つ共役イミンとは対照的に、アルキル基を持つイミンは、加水分解や酸、あるいは熱に対して非常に不安定であり、重合を起こしたり分解するために、その反応性については詳細には調べられておらず、有機合成にほとんど利用されてこなかった。しかし、N-アルキル共役イミンは複数の求電子性、および求核性原子を持つ高活性なamphiphilic反応剤として捉えることができ、反応系を適切に選ぶことにより、ユニークな合成戦略を展開できる可能性を秘めている。また、N-アルキル共役イミンは、生体内でも脂質代謝産物などの不飽和アルデヒドと、リジン側鎖やエタノールアミン、あるいはポリアミンなど様々な生体アルキルアミンとの反応により速やかに得られるため、この「見過ごされてきた共役イミンの反応性」が生体機能の発現や制御に関わる可能性を有する。今回我々は、水酸基やアミノ基を持つN-アルキル共役イミンが、速やかに[4+4] 環化反応を起こし、2,6,9-トリアザビシクロ[3.3.1]ノナンや1,5-ジアザオクタン化合物を与えることを見出した。この見過ごされてきた共役イミンの新奇な反応性を合成化学的に展開するともに、本反応がポリアミンによる酸化ストレスや生体内での機能調節に関与する可能性を見出したので、これらの経緯について報告する。

(1)共役イミンの[4+4]環化反応の発見

我々は、N-アルキルイミンの反応性を開拓する研究過程において、ベンジルアミンの存在下、共役イミンが[4+4]環化反応により二量化する反応を見出した(図1)1。すなわち、フマル酸アルデヒド1とベンジルアミンから得られる共役イミン1iに対して、0.5当量のベンジルアミンを室温で作用させたところ、5時間以内でかご型化合物である2,6,9-トリアザビシクロ[3.3.1]ノナン1aが定量的に得られることを見出した。1iのような共役イミンの調製法は古くから知られているが、過剰のアミンの存在下でイミンがさらに2量化反応を起こしていることを明確に示したのは我々が初めてである。N-アルキル共役イミンの「見過ごされてきた反応性」であると言える。本反応は置換基を持たないアクロレイン2、またはメチル基を持つメタクロレイン3やクロトンアルデヒド4を原料とした場合にも良好に進行し、これらアルデヒドに対して過剰量のアミンを作用させ、室温下で放置するだけでかご型化合物2a-4aを1ポットで得ることができた。一方、あらかじめ2種類の共役イミンをそれぞれ調製した後、さらに0.5当量のベンジルアミンの存在下で2つを混合することにより、異なるイミン間で[4+4]反応を進行させ、へテロカップリング体5を得ることにも成功した(図1下)。

 以上の結果は、求核性の高いベンジルアミンが1分子のイミンと速やかに反応し、アミノアセタールを経由することにより、もう1分子のイミンへの共役付加を促進させる(図2)。さらに、ジアセタール構造を持つ強固なかご型化合物1aが熱学的に安定な最終生成物として得られた結果であると考察できた。そこで我々は、共役イミンの

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