天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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水中バイオインスパイアード反応を鍵工程とするWIN 64821, ジトリプトフェナリン、ナセセアジンBの3段階合成
石川 勇人只野 慎治迎田 友里
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p. Oral41-

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抄録

【序論】

 バイオインスパイアード反応とは生物から発想される有機合成反応を指す。トリプトファンから派生した二量体型ジケトピペラジンアルカロイド類は自然界に数多く存在し、その二量化様式などの構造多様性、及び幅広い生物活性が知られている。アスペルギルス属の細菌から見出されたWIN 64821 (1)、ジトリプトフェナリン(2)はフェニルアラニンとトリプトファンのジケトピペラジンが3位同士で二量化した構造を有しており、サブスタンスPアンタゴニスト活性を有する1)。また,2009年、3位と7位の結合を有するナセセアジンB(3)がストレプトマイセス属の細菌から見い出され、その後、Movassaghiらの全合成により構造が訂正された2), 3)。また、最近では3位とN1位で架橋したペスタラジンBや7位とN1位で結合し、抗インフルエンザ活性を有するアスペラギラジンAが天然より見出されている4), 5)。我々は異なる架橋様式を有するこれら二量体アルカロイド類が同一の生合成経路から成り立っていると推定し、独自に生合成仮説を立案した。更に、提案する生合成をフラスコ内で再現し、5種の天然物を短段階で合成する事に成功したので報告する6)

【生合成仮説】

 生物は酵素を巧みに用い水中で化学変換を行っている。しかしながら、フラスコ内で反応を再現しようとする場合、基質となる有機化合物は水に溶解しない場合が多く、また、用いる試薬によっては水により失活してしまうという問題が生じる。一方、我々は生合成においてアルカロイドを基質とする場合、酸の役割が重要であると考えた(Scheme 1)。塩基性部位を持つアルカロイドは酸性条件において酸と塩を形成し、水に可溶となる。また、塩を形成する事により窒素の求核性は失活し、系内で保護されている状態となる。我々は二量体型ジケトピペラジンアルカロイドにおいて、1級アミン部位を持つトリプトファン誘導体が酸性水溶液中塩を形成した後、インドール環部が選択的に一電子酸化反応を受けると考えた。結果として生じるラジカルは共鳴混成体としてラジカル中間体A、B、Cが存在する。これら中間体がそれぞれの組み合わせで二量化し、更に、対応するアミノ酸とジケトピペラジン形成後、天然物へと導かれると考えた。

【バイオインスパイアード二量化反応の開発】

 提案する生合成仮説をフラスコ内で再現するべく、Nb-メチルトリプタミン(6)をモデル基質として1M塩酸水溶液中、二量化反応を促進させる酸化剤の検討を行った。MoCl5, Cu(acac)2, CuBr2, FeCl3を用いて検討を行ったが、反応は全く進行せず、原料を回収するのみであった(entries 1–4)。一方、Mn(OAc)3を用いた場合に3位同士の二量化生成物であるキモナンチン(7)を7%、ナセセアジンB(3)と同様の結合様式を有する8を37%、天然からの報告例は無い3位—5位に架橋を有する9を9%で得た(entry 5)。更なる検討の結果、VOF3、V2O5でも同様に二量化反応が進行する事を見出した(entries 6, 7)。いずれの反応も化合物8が主生成物であった。望む二量化反応を水中で進行させ

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© 2013 天然有機化合物討論会電子化委員会
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