天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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中国ならびにモンゴル産Gentiana属植物の成分研究
武方 みなみ洲山 佳寛田中 直伸栗本 慎一郎柏田 良樹
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p. Poster29-

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抄録

【緒言】

Gentiana属は、約400の植物種から構成されるリンドウ科最大の属である。本属植物は苦味を有することで知られ、世界各地で薬用に用いられており、1) 含有成分としては、iridoid、secoiridoid、およびxanthoneなどが報告されている。2)

 当研究室では、新規医薬シード化合物探索研究の一環として薬用植物の成分研究を行っており、今回演者らは、中国産ならびにモンゴル産のGentiana属植物 (G. rigescensおよびG. algida) に含まれる成分の探索を行った。G. rigescensは主に中国雲南省の山間部に自生する植物で、少数民族・イ族により肝炎や胆炎に対する民間薬として用いられている。一方、G. algida はモンゴルにてその地上部が、喉、肺および眼の感染症や発熱の治療に用いられている。これらの植物の成分探索の結果、16種の新規secoiridoidを単離し、それらの構造を明らかにしたので報告する。

【抽出・分離】

中国雲南省にて購入したG. rigescensを、地上部 (1.9 kg, dry) と根部 (866 g) に分け、それぞれMeOHで抽出した。地上部のMeOHエキス (354 g) をEtOAcと水で分配し、有機層をn-hexaneと90 % MeOH aq.で分配した。さらに、90 % MeOH aq. 可溶性画分をCHCl3と50% MeOH aq.で分配後、50% MeOH aq.可溶性画分をMCI gel CHP-20Pとシリカゲルカラムを用いて分離し、4種の新規secoiridoid 配糖体 (1, 183 mg; 4, 1 mg; 5, 5 mg; 7, 11 mg) と4種の新規secoiridoid (10, 2 mg; 11, 1 mg; 12, 5 mg; 13, 2 mg) を単離した。同様にして得た、根部のMeOH抽出エキス (234 g) 由来の90% MeOH aq. 可溶性画分を、各種シリカゲルクロマトグラフィーにて繰り返し分離・精製し、3種の新規 secoiridoid 配糖体 (2, 10 mg; 3, 2 mg; 6, 8 mg) ならびに2種の新規secoiridoid (8, 4 mg; 9, 2 mg) を単離した。

一方、モンゴルOvorhangay県にて購入したG. algidaの地上部 (918 g, dry) のMeOH抽出エキス (240 g) をEtOAcと水で分配した。水層をDiaion HP-20に付して得た、極性画分に含まれる成分を詳細に探索し、3種の新規secoiridoid配糖体 (14, 7 mg; 15, 3 mg; 16, 5 mg) を単離した。

Chart 1. Structures of new secoiridois 1–16.

【化合物1の構造解析】

 化合物1は光学活性な淡黄色非晶性物質として得られ、分子式はHRESIMSよりC25H28O12であると示唆された。1H および13C NMRでは、secoiridoid部分 (C-1–C-11)、糖部分 (C-1'–C-6')、およびC6-C3ユニット (C-1"–C-9") に由来するシグナルが観測された。1H-1H COSYスペクトルとHMBCスペクトルの解析により、各ユニットをそれぞれswertiamarin部分、glucose、および7,8-dihydrocoumaric acidと帰属した(Fig. 1A)。H-1/C-1’間のHMBC相関と、アノマープロトン (H-1’) の結合定数 (8.0 Hz) から、glucoseはswertiamarin部分の1位に b-結合することが示唆された。さらに、H-2’/C-9”間のHMBC相関より、7,8-dihydrocoumaric acidがglucoseの2位にエステル結合することが明らかになった。加えて、H-3/H-8”間の1H-1H COSY相関、H-7”/C-4間とH-7”/C-5間のHMBC相関から、swertiamarin部分と7,8-dihydrocoumaric acidがシクロブタン環を形成して結合すると帰属した。

 NOESYスペクトルにおけるH-9/H-7”間の相関(Fig. 1B) から、こ

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© 2014 天然有機化合物討論会電子化委員会
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