天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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33. 水銀トリフラート触媒を用いた1-アザスピロ[5.5]ウンデカン骨格の一挙構築によるヒストリオニコトキシン235Aの全合成(口頭発表の部)
*松村 匡浩吉田 浩明高見 麻衣小山 智之西川 慶祐森本 善樹
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p. 193-198-

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抄録

【 背景 】  ヒストリオニコトキシン類は、コロンビア原産毒カエルの皮膚から抽出されたアルカロイドであり、原住民の矢毒成分として利用された。本天然物群で最も有名なヒストリオニコトキシン 283A (HTX-283A、Figure 1、1) は、1971 年 Witkop らによってヤドクガエル Dendrobates histrionicus から単離され、ニコチン性アセチルコリン受容チャネルをアロステリックに阻害することで、強力な神経毒性を発現する1)。天然物 1 の構造的特徴は、1-アザスピロ [5.5] ウンデカン骨格を母格とし、二つのエンイン側鎖を有する点である。このヒストリオニコトキシン類に共通する含窒素スピロ環の効率的構築法の開発が、本天然物群の合成における重要な課題となっており、これまでに含窒素スピロ環を一段階で構築した例は報告されていない。また 1 にはヒストリオニコトキシン 235A (HTX-235A、2) の様な側鎖の異なる類縁体が複数存在し、それらの生物活性は十分に検討されていない。今後、網羅的な構造活性相関研究や、新規バイオプローブ分子の開発へと展開する際、HTX 類の効率的合成法を確立しておくことは必須である。所属研究室では、水銀トリフラート (Hg(OTf)2) を触媒2)とし、鎖状基質 3 から 1-アザスピロ [4.5] デカン骨格 4 を、効率的に構築する環化異性化反応を開発している (Scheme 1)3)。今回我々は、上記環化異性化と環拡大反応を組み合わせた 1 の形式合成を達成した4)。またさらなる効率化を目指す過程で、上記環化異性化反応を、HTX 類の1-アザスピロ [5.5] ウンデカン骨格の一挙構築法へと拡張することに成功し、ヒストリオニコトキシン 235A (2) の全合成を達成したので報告する。 【 HTX-283A(1)の形式合成 】  ヒストリオニコトキシン類の逆合成解析を Scheme 2 に示す。天然物 1 は、スピロ環 5 より既知の手法で誘導する。HTX 類の1-アザスピロ [5.5] ウンデカン骨格5は、1-アザスピロ [4.5] デカン 6 よりヨウ化サマリウム(SmI2)を用いる環拡大反応により構築する。スピロ環 7 は、鎖状基質 8 の水銀触媒による環化異性化反応により合成し、8 は既知のピロリジノン 9 5) とスルホン10 を連結して調製する。スルホン 10 は市販の1,3-シヨードプロパン(11)と既知のアルキン 12 6)との求核置換反応により合成する。

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