主催: 第60回天然有機化合物討論会実行委員会
会議名: 第60回天然有機化合物討論会
開催地: 久留米シティプラザ
開催日: 2018/09/26 - 2018/09/28
p. 241-246-
タンパク質の60%以上は糖鎖修飾を受け,免疫,がんなど様々な生体現象と関与する.一方,生体内で糖鎖は様々な構造の混合物(グライコフォーム)として存在するため,糖鎖の生物機能を分子構造に基づいて解明することは困難であった.N-結合型糖鎖(N-グリカン)はタンパク質のアスパラギン残基に結合する翻訳後修飾糖鎖で,多様な構造を持ち,それぞれの構造に基づき,タンパク質の機能を調節する.中でも,コアフコース,バイセクティンググルコサミン(GlcNAc),ポリラクトサミン,末端シアル酸などの構造は,免疫調節やタンパク質の活性制御に重要であることが,その生合成酵素のノックアウト実験により明らかにされている(Fig. 1).これは,N-グリカンが,レクチンをはじめとする種々の分子と相互作用し,タンパク質の局在や運動性などを調整して,その機能を制御するためである.本研究では,N-グリカンの機能解明のための合成糖鎖ライブラリ構築を目的とし,種々の構造を持つN-グリカンを合成した.さらに,糖鎖修飾がタンパク質の動態に及ぼす影響を解析するために,合成N-グリカンで修飾したタンパク質を調製し,ライブセルイメージングを行った. 1.N-グリカンの合成 1-1.コアフコース含有N-グリカン3の合成 まず,コアフコースとシアル酸を持つN-グリカン3を合成した.効率的合成を実現するために,還元末端の4糖1に対して非還元末端の4糖2を2度グリコシル化する収束的ルートを採用した.この際,カギとなるグリコシル化は大きなフラグメント同士のカップリ