天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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42. 二重連結型フラバンオリゴマーのde novo合成と甘味活性評価(口頭発表の部)
*大森 建武田 梨花子野口 柚華三坂 巧鈴木 啓介
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 247-252-

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抄録

植物に多く含まれるフラバンオリゴマーは、古くから健康を促進する物質として知られ、特にそのポリフェノール構造に起因する抗酸化作用が注目されてきた。また、本化合物群の織りなす多様な構造には、さらなる生理作用や未知の機能の発見も期待される。しかし、これらの化合物を天然から純度よく得ることは容易でなく、この物質供給の問題が関連研究の進展を妨げている。 フラバンオリゴマーの構造は、その結合様式により二つのタイプに大別される(図1)。一つはフラバン単位同士がC–C単結合により直鎖状に連結されているものである(例、プロシアニジンC1)。もう一つはフラバン単位がC–C間とC–O間の二つの結合で連結され、特異な[3.3.1]ビシクロ構造を形成しているものである(例、エスクリタンニンC)。前者の合成例は比較的多く、合成誘導体について構造活性相関研究も盛んに行われている1a)。一方、後者は潜在的に興味深い性質が示唆されているが合成例は限られている1b)。今回、我々は糖鎖合成において頻用されるオルトゴナル法と、独自に見出したアヌレーション法を組合せ、連続した二重連結構造を有するフラバンオリゴマーの合成に成功した。また一部の類縁体についてヒト甘味受容体を安定発現する培養細胞を用いた活性評価において、興味深い活性が観察されたので併せて報告する。 フラバンアヌレーション:先に我々は二重連結構造を有するオリゴマーの基本構造を構築する手法として、“flavan annulation”を見出した(図2)2a)。本法は、フラバン骨格上の2位と4位に脱離基を導入した合成単位Iをジカチオン等価体として用い、それをフェノール誘導体IIと反応させ、ビシクロ構造IVを一挙に構築するというものである。詳細な検討の結果、カチオン種は二箇所同時ではなく、段階的に生じることが分った。すなわち、Iに活性化剤を作用させると、まず4位が選択的に活性化され、フラバン誘導体IIとの炭素求核部位(8位)と反応する。続いて生じた中間体IIIの2位が活性化され、生成したカチオン種が分子内の水酸基に捕捉されてビシクロ体IVを与える。この反応において、はじめに求電子単位の4位が活性化される理由は、生じるカチオン種の安定性を考えると容易に理解できる。すなわち、4位に生じたカチオンは芳香環を介し三つの酸素原子による安定化を受けるのに対し、2位に生じたそれは、都合二つの酸素原子からしか恩恵を受けられない。なお、当反応は3位に導入した不斉炭素原子の効果により立体選択的に進行する。

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