天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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12. イリオモテオリド-2aの全合成と構造改訂(口頭発表の部)
*坂本 渓太袴田 旺弘岩﨑 有紘末永 聖武津田 正史不破 春彦
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p. 67-72-

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抄録

【序論】  海洋渦鞭毛藻Amphidinium種は、構造的に複雑で多様な二次代謝産物を生産することが知られている。特に、本種が生産する12〜29員環のマクロリド化合物は、骨格の複雑性と多様性に加え、培養がん細胞に対する顕著な増殖抑制活性を示し、構造・合成・活性のあらゆる面で注目を集めている1。イリオモテオリド-2a(提出構造式1)は、沖縄県西表島の海底砂泥に生息する渦鞭毛藻Amphidinium種の培養藻体(HYA024株)から単離、構造決定されたマクロリドである2。本天然物の相対配置ならびに絶対配置は、JBCA法3とROE相関を基盤とした詳細な立体配座解析、および、新Mosher法により帰属され、23員環の大環状マクロリド骨格中に2つのテトラヒドロフラン環が存在し、さらに不斉中心の密集した側鎖部分構造をもつ非常に特徴的な構造であることが報告された。さらに本天然物は、複数の培養がん細胞に対する低濃度での増殖抑制活性と担がんマウスにおける抗腫瘍活性も認められており、非常に興味深い天然物である。  我々は今回、イリオモテオリド-2aの提出構造式1とその立体異性体の全合成により、本天然物の相対配置を改訂するとともに、キラルHPLC分析により絶対配置を決定したので詳細を報告する。 【合成計画】  我々は1の全合成に向け合成計画を以下のように定めた(Figure 1)。すなわち、ビニルヨージド2とオレフィン3を鈴木-宮浦カップリングで連結後、カルボン酸4とエステル化し、最後に閉環メタセシス反応を行うことで1を収束的に得ることとした。全合成終盤で各フラグメントを連結する本合成戦略は、1の実践的な合成を可能するだけでなく、多様な構造類縁体合成にも展開が可能である。 Figure 1. 合成計画 【ビニルヨージド2の合成】 市販原料よりそれぞれ7工程で得た化合物5および6を第二世代Hoveyda–Grubbs触媒4で連結し、得られたエノン7をCorey–Bakshi–Shibata還元5することで、アリルアルコール8を高立体選択的に得た。化合物8をSharpless不斉エポキシ化とヒドロキシ基の保護により化合物9へと導き、続いてPMB基の除去と酸処理を施すことでテトラヒドロフラン10を得た。さらに分子内環化で生じたヒドロキシ基をメシル化した後、メタノール中塩基処理することでベンゾイル基の除去を伴った分子内求核置換反応6を行い、ビステトラヒドロフラン11へと誘導した。その後9工程の官

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