天理医学紀要
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原著
コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブの単独療法およびスタチンの併用療法による脂質代謝改善作用と安全性についての検討
田中 正巳
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2009 年 12 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

目的:小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブを単独投与あるいはスタチンに併用した場合の脂質異常改善作用と安全性について検討する. 方法:当院外来通院中の脂質異常症患者55例(男性22例,女性33例)を対象として,エゼチミブ10 mg6 か月間投与した. 結果:エゼチミブは単独療法群,スタチンとの併用群いずれにおいても,LDL-コレステロール(LDL-C)を有意に改善させた.単独療法群に比べ,スタチン併用群の方が改善度は大きかった.HDLコレステロール,中性脂肪は有意な効果を認めなかった.エゼチミブのLDL-C低下作用は,糖尿病,高血圧合併例でも認められた.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版におけるLDL-C管理目標値への到達率は,冠動脈疾患のリスクが高まるにつれて低下したが,エゼチミブとスタチンの併用群では二次予防群でも達成率が高まる傾向を示した.エゼチミブ投与前後で肝,腎機能,尿酸,CK, 電解質, HbA1c は有意な変化を認めなかった.有害事象は認めず,全例がエゼチミブ内服を継続できた. 結論:エゼチミブの優れた脂質代謝改善作用,高い忍容性及び安全性が確認された.糖尿病,高血圧などの心血管病ハイリスク群でも有効かつ安全であり,本邦の心血管イベント減少に寄与する可能性のある薬剤と考えられた.スタチン単独投与でLDL-C低下が不十分な症例や二次予防群では,エゼチミブとスタチンの併用療法が有効と考えられた

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© 2009 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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