2010 年 13 巻 1 号 p. 71-77
症例はfood protein-induced enterocolitis syndrome (FPIES)の1新生児例である.生後10日の女児が下痢と発熱を主訴に入院した.好中球の核左方移動がみられたが,白血球増多はなく,血清CRP値も軽度上昇であったため,ウイルス性腸炎と診断し補液を行ったが,症状は改善しなかった.抗菌薬の使用後に解熱傾向を示したが,再び発熱し,血清CRP値は上昇した.育児用牛乳調整粉乳を飲んでいたため,乳糖不耐症または牛乳アレルギーを疑い大豆乳に変更したところ軽快した.退院後,育児用牛乳調整粉乳に戻したところ,発熱,機嫌不良,下痢が出現し,白血球増多,好中球の核左方移動と血清CRP値の上昇(8.4 mg/dl),プロカルシトニン値の上昇(11 ng/ml) がみられた.FPIESが強く疑われ,特異的リンパ球刺激試験を行ったところ,α-カゼインに陽性を示した.生後11か月時の牛乳負荷試験も陽性であった.本症例は牛乳蛋白によるFPIESと考えられるが,重症細菌感染症を疑わせるような臨床像を呈する場合もあることを念頭に置く必要がある.