日本転倒予防学会誌
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特集
回復期リハビリテーション病棟における転倒予防~患者安全委員会を中心とした取り組み~
福江 亮
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2017 年 4 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

 回復期リハビリテーション病棟は機能障害の改善,ADL の向上,家庭復帰を目的に集中したリハビリテーションを実施する医療機関である。入院から退院までの間,患者の身体能力は変化し活動的になるにつれ,転倒する危険性も向上する。回復期リハビリテーション病棟の性質上,必ず転倒のリスクを伴うため,転倒予防の取り組みは必要不可欠である。

 当院では多職種による PDCA サイクルの実践と,詳細なデータ収集と分析を基にしたリスクマネジメントが特徴である。転倒予防についても,入院から退院までの PDCA サイクルをシステム化し,2 週間ごとの患者個人のミニカンファレンスや,週 1 回の病棟全体での転倒カンファレンスを中心に,多職種協働で包括的に取り組んでいる。定期的な患者個人の機能レベル・活動レベルの評価に加え,転倒アセスメント,自立チェックリスト,自室内行動チェックリストなど専門的な評価を行い,判断基準を統一している。さらに 2011 年からは「報告する文化」から「学習し進化する組織へ」と変貌を遂げるため,医療安全に関する組織を再編成し,新たに転倒転落に特化した組織「患者安全委員会」を設置した。委員会が中心となって,詳細なデータ収集や分析を行うことで,転倒カンファレンスの運営,センサーコールの管理とルール作成,転倒ラウンド,転倒事故への客観的介入,などの対策を実践してきた。5 年が経過し,設置前と比較して転倒発生件数,転倒率ともに減少傾向であった。さらに FIM 利得は年々改善傾向にあり,転倒を防ぎつつ,自立度の向上に寄与していると思われる。しかし,外出・外泊中の転倒や,骨折事故への対応が今後の課題である。

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