日本転倒予防学会誌
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原著
大腿骨近位部骨折を受傷した女性高齢者における退院後の生活空間と転倒自己効力感との関連性:継続入院者を対照とした横断研究
小枝 允耶柿花 宏信小枝 美由紀備酒 伸彦
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2017 年 4 巻 1 号 p. 23-31

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抄録

【目的】転倒自己効力感は行動を制御する要因として働き,行動変容に関わっている。本研究は,大腿骨近位部骨折後の女性高齢者において,長期入院患者(以下,入院群)と,4 週間で退院が可能となった患者(以下,退院群)の 2 群に分けて転倒自己効力感の差異と,自己効力感に影響を及ぼす要因について生活空間の面から検討した。

【方法】大腿骨近位部骨折にて手術療法を受け,リハビリテーションを行った女性高齢者 46 名を,入院群と退院群の 2 群に分けて術後 8 週間目までの経過を追い,運動機能,心理機能,生活空間評価(Life-Space Assessment: 以下LSA)を測定し2 群の比較を行った後,転倒自己効力感に最も影響を与えている要因について重回帰分析を行った。

【結果】入院群 22 名と退院群 24 名について,年齢,Body Mass Index(BMI),Mini-Mental State Examination(MMSE),入院前の日常生活活動(以下,FIM),入院前のLSA は 2 群間に有意差はなく,いずれも入院前のFIMやLSA がもともと高い高齢者であった。転倒自己効力感(以下,MFES)と運動・心理機能,退院後LSA を入院群と退院群で比較した結果,8 週間目のMFES と,退院後LSA で退院群に有意に高い傾向がみられた。8 週間目のMFES を従属変数として,転倒歴,8 週間目の運動・心理機能,退院後LSA を独立変数とした重回帰分析を行った。結果,退院後LSA,8 週間目FIM が転倒自己効力感との間に有意な関連があった。

【結論】大腿骨近位部骨折後の女性高齢者に対して術後 8 週間目の比較では,入院群に比べて退院群の転倒自己効力感の向上が有意に認められた。転倒自己効力感の改善には,日常生活活動能力に加え,自宅退院後の行動範囲の広さや,行動頻度の高さが関連していた。

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© 2017 日本転倒予防学会
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