日本転倒予防学会誌
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特集
耳鼻科医からみた転倒とその予防について
石川 和夫小泉 洸椎名 和弘
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キーワード: 転倒, めまい, 加齢, 多剤投与, 予防
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2018 年 5 巻 1 号 p. 13-15

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抄録

 転倒・転落による死者数は,交通事故による死者数をはるかに上回り大きな社会問題の一つになっている。その8割強は高齢者であり,加齢による身体・平衡機能の低下がこれに深く関与している。具体的には,加齢による高次機能,体性感覚,視力,聴・平衡機能,筋力,意欲が低下し,これに加えて,骨格の変形やいろいろな合併疾患と服薬増加がみられる。

 以上の特徴を有する高齢者で耳鼻科を受診する契機で多いのが『めまい』である。高齢者のめまいが増加してきていて,今後もしばらく増加が見込まれる。原因疾患としては,頭位性めまいが多いが,原因は多岐にわたる。

 めまい患者が転倒と結びつくことがしばしばある。転倒歴と背景疾患との関係でみてみると,中枢性めまい例,末梢性めまい例,それぞれおおむね20 %の症例でみられる。さらに転倒症例の検査上の特徴について検討すると,1)両側の半規管機能低下,2)暗所開眼下に自発眼振のみられるもの,3)視運動性眼振の開発不良,が認められた。重心動揺面積の大きな症例や,合併症に伴う多剤併用とその副作用にも注意しなければならない。

 加齢に伴う身体・平衡機能の低下は避けられないが,めまいは,それに加えてバランス障害を引き起こす何らかの原因があって発症するのであるから,その原因を突き止めて,適切な治療を施すことが,めまい患者の転倒リスクを減らすことに繋がる。さらに,適切な運動など,身体・平衡機能の低下に対するリハビリも大切であり,環境面からの整備も必要である。

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