本研究は、幼稚園教育要領における領域「表現」にふくまれる音楽・造形・身体表現について、その表現モードの違いにより生じる共有方法の差異とコミュニケーションのあり方を論じた。従来の芸術分類は、表現物と表現者を切り離し、その素材や表現媒体によって区分されてきた。本研究では表現者の表現への関わり方という視座から分類を再検討した。その結果、従来、時間芸術と考えられてきた音楽や文芸なども、舞踊等と同じように「身体性」が伴うものとして分類可能と考察した。また、身体性が伴う表現を中心に、その場で生じるコミュニケーションについて検討した。表現しながらその時間の中で同時にコミュニケーションを成立させるためには、表現者同士の間主観性に基づく動的コミュニケーションが不可欠であり、それを可能とするために、保育者が身につけるべき感性について論考した。