2017 年 11 巻 p. 171-179
本論文では2017(平成29)年に改訂された幼稚園教育要領と小学校学習指導要領について、それぞれの主旨を踏まえ幼小接続に関する新旧比較を行うことで考察した。幼小双方を研究することで研究領域における「幼小接続」を意図するものである。改訂幼稚園教育要領において「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(「10の姿」)が示されたが、これは幼児教育に限定されるものではなく、共通言語として機能し、小学校側が幼児教育の理解を深め、幼児教育で育まれた資質・能力を小学校教育全般において念頭に置くためのものであり、幼小接続の強化に寄与するものである。しかし、「10の姿」が幼児教育の到達目標として認識されてしまう危惧や、その結果「10の姿」を準備するための幼児教育になってしまう危惧、「10 の姿」を年長児に特化したものとして理解されてしまう危惧がある。これらは幼小連携を揺るがしかねない重大な危惧である。