東京未来大学研究紀要
Online ISSN : 2433-5487
Print ISSN : 1882-5273
原著
「福祉ミックス論」はどこからきたのか、その背景と主張
―これからの日本の社会福祉のあり方について考える―
上田 征三 金 政玉
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2019 年 13 巻 p. 23-34

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抄録

 日本の社会福祉分野は戦後どのように変化してきたのか、「福祉ミックス論」との関連で整理し課題について検討する。その視点は、1.「措置制度」に関連する福祉行政の現状、2.「社会福祉基礎構造改革」の多様な主体の参入における利用者の給付請求権の課題、3.イギリスの「コミュニティケア」と「福祉ミックス論」が日本に与えた影響、4.利用者のサービスを受ける権利の法制化の課題、の以上4点である。その結果、浮かび上がったのは、緊縮財政に左右される現状と「福祉ミックス論」の枠組みにおいて「利用者本位のサービス提供」を具体化する仕組みの不在である。イギリスにおいてはノーマライゼーションなどの理念が「コミュニティケア」の原理として重要視されてきたことが確認できるが、それは「確認」にとどまっているといえる。利用者本位の「福祉の多元化」を具体化する仕組みが構築されるためには、まず、「サービスの請求権」を担保できる「ガイドライン(指針)」の策定とその具体化が急がれるだろう。

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