抄録
【目 的】 偽性麻痺肩に対する保存療法にて,病態や病期を勘案した理学療法が奏功し,挙 上動作の改善に至った一例について報告する.
【対 象】対象は 77 歳男性,転倒後より右肩関節周囲の疼痛と腫脹が出現,他動可動域で は制限を認めないが,自動挙上が 10°と偽性麻痺肩を呈したことで保存療法が開 始となった.初期評価より元来腱板筋機能が破綻していたことが示唆され,三角 筋機能や肩甲骨運動の代償を用いた挙上動作戦略を用いていたと推察した.
【理学療法と経過】 患部の状態を考慮して治療方法を検討し,疼痛発生の主因を推察した.肩峰部へ の過負荷を避けながら早期より三角筋や肩甲骨周囲筋機能の改善に努めた結果, 理学療法開始より 3 ヶ月後に自動挙上が 130°へと改善した.
【結 語】 外傷を契機に偽性麻痺肩を呈した症例に対し,評価し得た所見から受傷前の挙上 動作戦略を推察し,病期に応じた治療を実施したことで良好な結果に至った.