美術鑑賞における作品批評の語彙の獲得と深まりを目的として、中学校第3学年において比較による差違と共通性を見出す鑑賞指導を行った。生徒が参照しやすい美術資料集に掲載してある作品の中から「月光菩薩立像とサモトラケのニケ」、「風神雷神図屏風とヴィーナスの誕生」、「平等院鳳凰堂とランス大聖堂」を対比題材として取り上げた。主に日本と西洋の同構図の作品から、相違点と共通点に着目させることによって、これまでの主観的な感想中心の鑑賞から、批評的見地の習得を目指した。気付きや感受内容を言語化したワークシートや鑑賞文を分析して、それらの獲得を検討した。日本と西洋の比較鑑賞における相違と共通性の視点は、可視的な「即物的記述」レベルから、不可視の「意味的解釈」「本質的直観」レベルへの道筋を往還しやすく、生徒の作品批評の語彙の獲得において有効であることを明らかにした。