2019 年 13 巻 p. 103-107
本稿では、イギリス地名協会編纂の『イングランド各州地名要覧』(以下、『要覧』)による気候地名の収集作業が最終段階を迎えたことを受け、テーマを限定して、現時点における成果の一部と今後の課題等について論じる。今回は、「涼しい(“cool”)」を意味する古英語cōlを第1要素とし、第2要素として水文景観(water features)に関する名詞が後続する地名36例を取り上げる。気候地名収集の過程においては、採録の対象とする個々の地名の綴りを常にデータベース化していくことが議論の妥当性強化につながる。36例という出現数は、1924年から出版継続中の『要覧』が収録する地名数から見れば極めて少ないが、背景として、地名研究におけるcōlの扱い自体にいまだ不十分な点があるのも一因かと推察される。今後は、周辺関連領域の視点も交えながら、やはり「寒暖」に関する気候地名で、「寒い、冷たい(“cold”)」を意味する古英語caldを第1要素とする地名と関連付けて検討していく。